上野東照宮「透塀」【重要文化財】

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上野東照宮「透塀」【重要文化財】

読み方

  • すきべい  …..君はスケベぃ
造立年

  • 1651年(慶安4年)
大きさ

  • 一周延長「八十九間」
    ※柱と柱の間の面が89面あるということ
屋根の造り(素材)

  • 銅瓦葺
重要文化財指定年月日

  • 1911年(明治44年)4月17日

上野東照宮「透塀」の歴史と特徴

上野東照宮が1627年(寛永4年)に創建した後、1651年(慶安4年)に、時の将軍・徳川家光により、社殿の建て替えが行われました。

社殿を取り囲む透塀は、この時に造営されています。

社殿の建て替えには、日光東照宮まで足を運べない江戸の人々が参拝できる場所を整備するとともに、社殿を日光東照宮に倣った豪華絢爛なものにするという目的がありました。

そのため、日光東照宮と同じような、上下に彫刻があしらわれた透塀が設けられたものと思われます。

社殿の正面に唐門があり、その左右から、社殿を取り囲むように透塀が造られているという構成も同じです。

さて、透塀とは、格子や透かし彫りをあしらい、向こう側が見えるようになっている塀のことで、上野東照宮の透塀は、菱形に組んだ格子が特徴となっています。

透塀は社殿の東西南北を囲んでおり、上段には野山の動物や鳥、下段には海川の魚や鳥など、合計約90種類がデザインされた彫刻があり、なんと257枚あるといいます。

一部は非公開エリアにありますし、拝観できる場所でも燈籠や木に隠れているものもあるため、すべては見えませんが、丁寧に見て行けば、100枚くらいは確認できます。

透塀を見られるのは大体黄色の枠内

この彫刻は、狩野派の絵師が下絵を描き、彫師が彫ったものと考えられています。

実在する動植物がほとんどですが、実物に寄せて描かれているものも、大きくデフォルメされているものもあります。

同じ動植物を描いた彫刻はあっても、構図まですべて同じというものは1つもありません。

※下段の彫刻は、触れられる位置にあるため、アクリル板で保護されています。




平成の修復工事

造立当初、これらの彫刻は、現在のように極彩色で塗られていましたが、1965年(昭和40年)の修理の時に、弁柄漆に塗り替えてしまったようで、しばらくは漆色の彫刻になっていました。

塗り直し前の透塀

それを、2009年(平成21年)から2013年(平成25年)に行われた社殿の保存修復工事の際に、造立当時の姿に戻そうということで、新たに色が塗られました。

当初、「日光や久能山の東照宮の彫刻にはいずれも色が塗られているのだから、上野東照宮の透塀の彫刻も、漆を剥がせば色が出てくるだろう」と予想されたのですが、どうやら色を消してから漆を塗ったようで、漆の下に元の色は出てこなかったそうです。

そこで、彫刻にあるすべての動植物を特定し、実物の動植物の色や、日光東照宮の彫刻の色も参考にしながら、有識者の間で検討が重ねられ、色が決定され、晴れて新たに彩色が施されています。

顔料は造営当時と同じ岩絵の具で、金箔を押した上から、境目をぼかしながら彩色を施す「生彩色(いけざいしき)」と呼ばれる方法で塗られています。

ですので、彫刻のモチーフの縁取りが金色に輝いて見えます!

上野東照宮「透塀」の彫刻紹介!

上述の通り、透塀を塗り直す際には、伝説上の神獣も含めて、すべての動植物を特定して、色を決定したそうです。

その中から、以下では比較的わかりやすいものの写真と共に、、どんなものが描かれているのかをご紹介します。

鳥類

  • 雀(すずめ)、鷲/鷹(わし・たか)、鳩、燕(つばめ)、文鳥、鶯(うぐいす)、瑠璃鳥(オオルリ・コルリ・ルリビタキ)、雉(きじ)、目白、八頭(やつがしら)、山鵲(さんじゃく)、モズ、ビンズイ、ヒレンジャク、チョウゲンボウ、セッカ、鷽(うそ)、インコ、イカル、コマドリ、アオジ、アカハラ など。

小鳥がとにかく多く、特に野鳥に親しんだ人でなければ、茶色い鳥はほとんどスズメの兄弟くらいに見えてしまうだろうと思われます・・

頑張って書き出しましたが、他にもありますので、ぜひ現地にて、ご自身の目でご確認ください。

モズ

スズメやモズかと思われる小鳥の彫刻はたくさんありますが、専門家が見れば違う種類の鳥だ、というものもありそうです。

こちらの鳥は、背中が青く塗られているものの、目の部分に黒い筋があり、スズメというよりはモズではないかと思われます。

スズメの彫刻は別にあり、こちらは、頬の部分に黒い点があるのが特徴です。

キジ

キジのつがいが、躍動的に描かれています。

キジは日本固有の鳥で、『古事記』『日本書紀』にも登場しています。

ケーンケーンという鳴き声が、恋人や子を恋い慕って呼ぶ声と解釈され、古くから和歌にも詠まれるなど、日本人にとってはなじみ深い鳥です。

ちなみに、1947年(昭和22年)には、国鳥に指定されています。




動物

  • ねずみ、猪(いのしし)、猿、鹿、兎 など。

鳥に比べると種類は少ないですが、野山の動物の彫刻もあります。

ネズミ

道端で出くわしてしまったらちょっと嫌なネズミですが、大国主命(大黒様)の使者としても知られ、財運や子孫繁栄の縁起物でもあります。

背景となっているのは、へちまでしょうか。

なんだかリラックスした様子の猿の彫刻です。

栗の木の上で一休みでしょうか。もうお腹いっぱい食べたあとなのかもしれません。

猿と言えば、日光東照宮の「三猿」と呼ばれる彫刻が有名ですが、上野東照宮には三猿はいないようです。

  • カマキリ、蝶

草木が茂る中に隠れている虫が、見えるでしょうか・・?

カマキリ

神社に虫の彫刻なんて珍しいように感じますが、実は、カマキリは江戸時代に好まれた画題の一つでした。

「蟷螂の斧(とうろうのおの)」という以下のような故事もあるので、特に武士が愛した虫だった、ということのようです。

蟷螂の斧

古代中国・斉の荘公(そうこう)が狩りに出る時、前脚を上げ、車の車輪を攻撃しようとしている虫を見かけました。
そこで荘公が御者(ぎょしゃ:馬車の運転手)になんという虫か尋ねると、
「蟷螂(とうろう:かまきり)という虫で、前に進むばかりで後ずさりを知りません。自分が小さいことを考えず、相手を軽んじます。」と答えました。
これを聞いた荘公は感銘を受け、「この虫が人であったなら、きっと天下の勇武となるだろう」と、カマキリをよけて車を進ませました。

蝶は、幼虫からさなぎ、そして成虫へと形を変える神秘性から、「不死」「不滅」「長寿」の象徴として、特に武士たちに好まれ、平家を始め武家の家紋にもなっています。

水の生き物(鳥)

  • 鴨、鴎(かもめ)、鴛鴦(おしどり)、鷺(あおさぎ)、白鷺(ヘラサギ?)、翡翠(かわせみ) など。

水鳥は、透塀の下の彫刻に入っており、野山の鳥と同じく、たくさん見られます。




水の生き物(その他)

  • カエル、カメ、鯉、鯰(なまず)、貝(ヒオウギガイ?とアワビ)、蓮の花 など。

淡水の水の生物が中心で、川の流れ、水しぶき、渦巻きなども迫力満点に表現されています。

カエル

彫刻に描かれた動植物がすべて縁起物とは限らないようなので、関係があるかどうかはわかりませんが、カエルもまた、「生きて帰る」「無事に帰る」とかけて、昔から縁起の良い生き物とされていました。

鯉と言えば、「急流を上り切った鯉は龍になる」という「登竜門」の故事が有名です。

ただ、この鯉は急流を上っているように見えないので、登竜門と関係があって採用されたモチーフかどうかはわかりません・・。

カメ

一見すると龍のようですが、甲羅とふさふさの尻尾が見えます。

このふさふさの尻尾を持った亀、よく絵や彫刻で見かけますが、何なのかご存知ですか?

これは、元々は甲羅に緑藻(りょくそう、アオサなどの藻類)をまとったイシガメで、蓑亀(みのがめ)と呼ばれます。

亀の甲羅に藻が生えてしまっただけなのですが、長寿の縁起物として、藻が尻尾の方まで長く伸びた格好で描かれ、吉兆文様や家紋に用いられています。

動物の背景として出てくる草花

  • 松、竹、梅、紅葉、牡丹、桜、椿、菊、柿、すすき、へちま、瓢箪(ひょうたん)、栗、万年青(おもと)、菖蒲(あやめ) など。

脇役である植物も非常に多様で、松竹梅、瓢箪、万年青など、縁起物も豊富です。

上記の植物の他に、桔梗(ききょう)と思われる花や、南天のような赤い実のなっている木も見られます。

万年青(おもと)

こちらの鳥の彫刻の中央左よりには、金色のつぶつぶした花を咲かせた、先のとがった草が見えます。

これは「オモト」と呼ばれる植物だと思われます。

オモトは300~400年に渡って、園芸植物として親しまれていると言われています。

一年中青々としていることから、家運隆盛などの縁起物とされ、引っ越し先に一番最初に搬入すると吉と言われています。

そのため、「徳川家康公が江戸城へ入る時に家臣から献上された」というエピソードも残っており、江戸幕府の人々にとっても馴染みのある植物で、大名たちも好んで栽培しました。

なお、このオモトという植物は花を観賞するものではなく、主に葉の出来を楽しむ植物なのだそうです。

松竹梅

縁起が良い草木と言えば、やはり松・竹・梅です。

上野東照宮の透塀の彫刻には、松竹梅がよく登場します。

こちらの猪の彫刻にも、松が見えます。

ウグイスと梅の組み合わせの彫刻もあるので、ぜひ探してみてください。

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